PEAVEY QW2F オーバーホール

PEAVEYのQWシリーズというものをご存知でしょうか。
同社からこの1世代前に発売されていたポータブルPAスピーカーのフラッグシップシリーズ「DTHシリーズ」の後継と位置付けられるシリーズということもあり、ツアーサウンドに耐えられる高級シリーズです。
車でいうところのセルシオの様に、工夫と手間、材料を惜しみなく投入された造りとなっており、メーカーとしての「ここまで出来るんだ!」というシンボル的なモデルだったような気がします。
どの業界、メーカーにも1つはそういうモデルってありますよね。

当時のカタログです。仕様としては4インチの大型チタンツイーターやピーク3200wの耐入力など、JBLのSRX700シリーズあたりのラインを意識して作られているような内容ですね。
ただし、こちらのほうがエンクロージャーはビッグでヘビーです!

今回はとある教会から買い取らせていただいたQW2Fという(15インチフルレンジ)モデルをピカピカにオーバーホールしていこうと思います!
それにしても重い!!アメリカ人さんはこれを一人で持てるのだろうか、、1本45kgでハンドルの位置も重心の関係か前側にあり、ちょうど力が入りにくい位置。身体に重量を預けられず私には持てませんでした。スタンドマウントも危ないのでホールのステージや足場を組んでのスタック専用かなあ~。

ひとまず全ユニットを外して内側の各所状態確認を兼ねて掃除をしていきます。
中には箱鳴り抑制も考慮された剛性材もガッチリと取り付けられており、フェルトとポリエステル系の綿がしっかりと全面に貼られています。ネットワークもデカいですねえ。

ウーハーユニットのコーン紙はブラシで丁寧に掃除のうえ、カビの生えやすいエッジ部はカビ予防材を薄くスプレー、その上からフキサチーフで薄く樹脂コートをしておきました。私は中古で仕入れたスピーカーにはほぼすべて、この防湿、防傷、対UV性を高める工程を施すようにしています。PA用途なのでこういうところからの不安つぶしが現場での余裕に繋がるので絶対に省かない大切なメンテナンスとしています。

このProRiderというウーハーユニットはマグネットを流用して簡単に(コーン&コイル)部を交換できる”リコーンバスケット”という部分とマグネット部の構造になっています。なので、コイル部の確認がこのようにネジを外すだけで出来きます。

なんと、センターキャップ内に加水分解して、今にも崩れそうなエアフィルターがマグネットのセンターダクトから離脱して転がっていました。。このままだとギャップに崩壊したウレタンが詰まり、コイルの熱が付着した部分に溜まってコイル焼けの原因や付着したスポンジが湿気を保持して錆びを呼ぶ原因にもなります。故障ってこういうところから始まるんですよね。。

ボイスコイルにもロゴがスタンプ?されており芸が細かいですねえ。
幸いコイル焼けもサビも無く良好な状態でした。まだまだ鳴りますね。

マグネットの横からも冷却エアが入るための隙間があり、エアフィルターがリング状に取り付けられています。まだここは劣化していませんが、予防交換しておきましょう。

この様に引っ張りながら取り外せます。

交換品としてチョイスしたのは、私があらゆるところで活用している、エアコン用のフィルターです。劣化しにくいですしエアの抜けも良いのにしっかりとホコリをガードしてくれて便利なんですよ~。

これはちょっと丸めて、一周はめ込んでいきます。始点と終点、あと要所はホットボンドが手軽ですし繊維に絡んでしっかりと接着されます。

センターキャップ内に繋がるダクト穴も、同様にカットして貼付け。これでもうコイルにはホコリの侵入を許しません!これでいったんウーハーのメンテナンスは完了です。

さて次はツイーターです。このホーンは途中から網目構造スポンジが貼られており、ホーンのピーキーさのクセを制御しているんですね。ちょっとカビも発生しちゃってますし、長くは持たなそうなのでここも交換します。

カッターで接着をガリガリと剥がしていきます。

交換用の材料としては、同様に3次元網目構造のモルトフィルターを採用します。荒さは元の仕様に近いMF-50を選定しました。この部分、単に似ているからとスポンジを使ってしまうと吸音してしまうので気を付けてください。あくまで、音を透過しつつ、ホーンのクセを制御するためには水や油のろ過フィルターなどに使われている3次元網目である必要があります。
今回は耐油性のフィルターにしたので、耐用年数もさらに伸びるはずです。紫外線や湿度に気を付ければ、私が生きている間は無交換でいいんじゃないかな~と想定しています。

こんな感じで貼付け完了です。この部分も、パーツクリーナーで脱脂のうえ、ホットボンドで簡単に貼付けしました。

因みにこのツイーター、ダイヤフラムだけで10cmあるので、マグネットは20cmくらいあるんです。
重量も相当あり、12インチウーハーと同じくらいかな。
このQW2Fは15インチ1発ですが、実質的にはダブルウーハー並みのユニット重量がこの筐体にギュッと詰まってるので余計重く感じるんですね。

ポリウレタン塗装のエンクロージャーにもワックスを塗ってピカピカにして、いざ組み立て!
この瞬間が一番達成感あります。

いやあヘビーデューティーでかっこいいですねえ!!
音も流石4インチツイーターなだけあって、艶のあるリアルな中高音、パワフルでタイトな低音で素晴らしいライブサウンドです。早く現場で鳴らしたい~!